アーネスト・ヘミングウェイ 著 / 福田恆存 訳
あらすじ
キューバの老人サンチャゴは84日間の不漁を耐え、早朝1人小舟に乗って沖に出る。
彼を慕い、身の回りの世話をする漁師見習いの少年マノーリンがその船出を見送った。
日が昇りきった頃、老人の仕掛けた網に大魚が掛かる。その大魚は釣り針を物ともせず、老人の小舟を引っ張って大海原を進んでいく。深い海の底にいるそれは姿を現さないが、老人は長年の勘から只者ではないことを察する。
大魚との闘いは油断ができない。老人は網を握り続けたまま眠り、簡単な食事をする。引っ張られる網のせいで体を船に打ち付け、掌を切った。「あの子がいてくれればな」と何度も思う。少年は老人と一緒に漁に出たがったが、不漁が続く老人は「少年の漁運が逃げるから」と断ったのだった。
老人は大魚と共に大海原を進んでいるうちに、それに対し兄弟分のような特別な感情を抱く。そして「絶対に俺はお前に負けない」そう海中に向かって叫ぶのだった。
大魚が海面に姿を現したのは、網に掛かってから4日目のことだった。
正体は巨大なカジキマグロだった。
ジリジリと太陽が照らす中、十分な睡眠も取れず、満身創痍の老人は気を失いかけながらも網を引きカジキとの死闘を繰り広げる。そして、銛をカジキの腹に突き刺し最後の一撃を加えた。
そのカジキは老人の乗る小舟をゆうに越える巨体だった。このまま引いて港に戻るしかない。大魚に引っ張られ途方もない大海原にやってきた。そして今度は老人がそれを連れて帰る番だ。老人は達成感に満ち溢れていた。しかしながらこの大海原には敵が大勢いるのだった。
カジキから流れる血の匂いに引き寄せられ鮫が何匹も襲ってくる。老人は棍棒やナイフで懸命に追い払うが、小舟に1人、装備もなく戦うのは限界だった。
片時も離れなかった兄弟分の身体が容赦無く食いちぎられていく。
しかしカジキの身が食われていくにつれ、皮肉なことに小舟は速度を増し進んでいく。深夜、港に帰り着いた頃にはカジキは頭、背骨、尾ひれしか残っていなかった。
老人は這いながら自宅の小屋に戻りベッドで眠る。
老人の小舟が港に着いていること、そしてその傍に巨大魚の残骸がくくりつけられていることを漁師達が発見する。カジキは全長約5メートルもの大きさだった。
少年が小屋を訪ねると老人は深く眠っていた。寝息で生きていることを確認し、闘いの勲章である両掌の傷を見て少年は声をあげて涙を流す。
目を覚ました老人に少年は、捜索隊が出たことや老人が不在の間の漁の成果について話す。そしてこれからは、自分を連れて漁に出て色んなことを教えてほしいと言うのだった。
老人は大魚を持ち帰り成果を漁師仲間たちに見せることはできなかった。しかしながら、頭と骨だけでもその凄さは皆に伝わったのだった。
たとえ完璧な成果を残せなくとも、その過程は紛れもない事実なのだ。
作中でサンチャゴ老人は鮫の肝油を飲んでいるという描写がある。味は不味いが体力の源となると老人は言っていた。
先日テレビを観ていたら、鮫の肝油のサプリメントの通販CMが流れていた。これまでだったら気にもとめなかったが、興味深くCMを観てしまった。