ミゲル・デ・セルバンデス作/永田寛定訳
騎士道物語(現代でのファンタジー小説)に没頭し現実と物語の区別がつかなくなった初老の郷士が、ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャと名乗り冒険に繰り出す物語。
彼は物語の中で狂人として扱われ、嘲笑される存在である。
風車を巨人と思い込み戦いを挑み、羊の群れを合戦中の兵士と思い込み突進していく。
不都合なことに出くわすと幻術をかけられたと騒ぎだす。
「冒険が終わる頃には領主にしてやる」という郷士の誘い文句を信じた間抜けな男、サンチョ・パンサは冒険に同行することとなったが、行く先々でトラブルを引き起こす郷士のせいでボコボコにされ、ひもじい思いをし、愛ロバを盗まれ、散々な目にあう。
しかし、一番散々な目にあっているのは、ドン・キホーテの愛馬であるロシナンテだ。
骨と皮ばかりの痩せ馬であるのに関わらず、主人の暴走に必ず巻き込まれるのだから。
物語中盤まではドン・キホーテとサンチョ・パンサの二人旅となるが、後半では郷士を連れ戻そうとする友人たち、とある事件により逃亡してきた男女の出現により旅は大所帯となっていく。
ドン・キホーテは満身創痍の状態で村へと帰ることになったが、次の冒険に飛び出すにはそう時間はかからなかったと物語は終わる。
読み始めはドン・キホーテのトラブルメーカーっぷりに呆れてしまったが、中盤以降で登場人物が増えていくと面白さが増した。
ドン・キホーテの妄言を窘めていたサンチョが、後半になると葡萄酒を巨人の血と主張する描写は、狂人の連鎖を表しているのではないだろうか。
四六時中一緒に居て妄言を聞いていると、自分もそう見えてしまうという怖さ。
古典文学であるため、なるべく読みやすいものをと思い岩波少年文庫版を選んだ。
この本は図書館で探したのだが、想像以上に年季が入っていて驚いた。
巻末の「岩波少年文庫発刊に際して」というページに感動したため残しておきたい。
1950年、過酷な時代を生きる子供達への想いに大きく心を揺さぶられた。