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世界標準の経営理論(入山章栄)

世界標準の経営理論

入山章栄 著

 

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本書は世界中で生み出された経営理論の中から、「ビジネスの真理に肉薄している可能性が高い」として生き残ってきた「標準理論」の約30個を「世界標準の経営理論」として網羅・体系的に纏めた書籍である。

手に取った際には辞書のような分厚さに面を食らってしまったが、「なるべく分かりやすい言葉で」という著者の配慮もあり意外にもスラスラと読み進めることできた。

 

巷には経営理論、経営戦略に関するビジネス本が溢れており、課題発見や解決のフレームワークに焦点が当てられている。しかしながら本書は、経営理論を思考の軸として持つことを推奨している。

フレームワークはHOWという型、手段に過ぎない。分析対象をその型にはめ込むと視覚的に結果が出るため満足するが、その後の展開に窮するということもあるだろう。

例えばSWOT分析を行なった際に、「さあ、マトリックスは埋まった。色々あるな〜」と結果を見るが、そのマトリックスは「なぜそう言えるか」というWHYには答えられていない。そのまま議論が進んでしまうと、「そもそもどうして」と堂々巡りになってしまう。

型にはめ込んで出た結果に人々の腹落ちがないためだ。

 

それに対して、経営理論は「なぜそうなるのか」というWHYに一つの切り口から明快な説明を与える。複雑なビジネスや組織のメカニズムに「これ」と確実な正解を与える訳ではないが、経営理論を軸にして思考を深め、考えを共有することができる。それに納得すると人は行動していく。

 

ビジネス・経営とは人や人からなる組織が行うものであるため、経営学は「人・組織は本質的にこう考え、こう行動する」ということに基盤を持った経済学、心理学、社会学を応用している。本書ではこのディシプリン別に経営理論がまとめられているが、その中からそれぞれ1つを紹介したい。

社会生活を送る中で感覚として持っていた事も、言語化された理論を読むことで更に納得することができた。

 

経済学ディシプリンの経営理論『SCP理論

競争環境を少しでも独占に近づけると安定して高い超過利潤をあげられる。

そのため他社(他者)と似せないこと、差別化することが重要となる。

また、「みんなが使っているから」というネットワーク効果は雪だるま式に顧客を増やすことに繋がり、一度独占状況を実現すると簡単には揺るがない。

従って新たな独占を作るためには別のフィールドを作り、拡大する必要がある。

 

マクロ心理学ディシプリンの経営理論『知の探索・知の深化の理論』

自分の現在の認知の範囲外にある「知」を探索し、それを今自分が持っている「知」と新しく組み合わせる。そして、新しい組み合わせを試みる中で生まれた「知」を徹底的に深堀し、収益化につなげる。探索と深化はどちらに偏りすぎてもいけない。

知の探索はコスト・負担がかかる上、不確実性が高く疎かになりがちだが、イノベーションには不可欠である。

 

ミクロ心理学ディシプリンの経営理論『センスメイキング理論』

センスメイキングとは解釈の多義性を減らし、足並みを揃えることにある。つまり納得。

組織・周囲のセンスメイキングを高められれば、周囲を巻き込んで、客観的に見れば起きえないような未来を作り出すことができる。

そのためには、言葉で周囲に語りかけることが重要となる。

 

社会学ディシプリンの経営理論『新レッドクイーン理論』

同業ライバルとの競争そのものが自己目的化してしまった場合、多領域に進出した時や大きな環境変化に見舞われた時には生き残れなくなる。過度に競合相手だけをベンチマークした結果、別の競争環境で生存する力を失ってしまう。

真の競争相手はライバルではなく、自分のビジョンである。「そのビジョンを達成するためには」を考え自身の認知の範囲を広げ、新たな選択肢を探す行動を起こすのである。

 

 

本書で紹介されている理論は企業・組織という大規模なものだけに当てはまるのではなく、個人という単位で自分を見つめ直すことにも応用できる。

本書は思考の壁にぶつかった時に助けてくれる相棒となるだろう。ぜひ側に置いておきたい。